2006年12月04日

ELの選択−その2

悩みました、ひと月近く。悩んだと言うより苦しんだと言った方がいいかもしれません。
40年以上生きてきて、こんなに難しくてツライ選択を迫られたことはありませんでした。
自分で言うのもなんですが、あたしはこれでも精神的にかなり強い方手(グー)だと思っています。
そのあたしが、夜中に何度も目が覚めたり、日中もドキドキしてじっと座っていられなくてオフィスをただうろうろと歩き回ったり、仕事が全く手につかなくなりました。
学生のペーパーの採点をしなきゃならないのに、文字を目で追うだけで、内容が全く頭に入ってこないんです。

誰かに相談しようにも、同じ専門の人でないと事の重大さや複雑さがわからないだろうし、同じ専門の人に相談するとその人にも通報の義務が生じてしまう。
でも、一人では抱えきれなかったし、自分がすっかり巻き込まれている状態で正しい判断をする自信がなかったので、友人を特定できるような情報は隠したままで何人かの人たちに相談しました。
アナタならどうする?と訊いた時に、みんな考え込んでしまいました。
「何てことに巻き込まれて!」と同情してくれたり、「こんな難しい問題他にないよ」と言ってくれたり。
でも、最終的には「通報した方がいい」と。
でも、この友人にとって、この夢がどれほど大切なものか、あたしには痛いほどよくわかるんです。
夢を失くして絶望した友人は死を考えるかもしれない・・・
そしたらあたしは・・・

悩んで悩んで、苦しんで苦しんだ挙句にあたしが出した結論は、友人を自首(?)させる、ということでした。
万が一表沙汰になった時のことを考えたら、表沙汰にならない可能性に掛けるにはリスクが大きすぎる。
それに、友人が自分で自首したら、それだけ罪は軽くなるかもしれないし。
基本的にウソがつけない友人が、これから先ずっと周囲にウソをつき続けなきゃならなくなったら、いずれこの友人は本当にダメになるかもしれない。
表沙汰になれば、この友人のことをもっと身近で助けてくれる人が他にもできる。

友人と何度も何度も何時間も話しました。
自首するように説得しようとしました。
でも、友人はどんどん頑なになっていく一方で、遠くに住む友人をあたしは電話越しに言葉だけで説得することができませんでした。
最終的には、アナタが自首しないんだったらあたしが通報する、と最後通告をつきつけて、やっと自首すると言ってくれました。
結果あたしは、その友人の中ではすっかり悪者になってしまって、さんざん酷いことを言われました。
でも、夢を失うかもしれない友人の気持ちを考えたら、何も言い返せませんでした。
その友人は同業者ではない一般の友だちにも同じ事を打ち明けているんです。その一般の友だちはこの友人の気持ちを一番に考えてくれている、と。アナタはどうしてそうしてくれなかったんだ、と。
でもね、その一般の友だちには、何の義務も責任もないんだよ・・・

こういう状況で、自分が罪に問われても、自分の全てをなげうってでも、友を守る、というような話はよくテレビや映画にあります。
あたしのしたことは「友を売る」という行為かもしれません。
この友人はあたしに「友だち」でいて欲しかったのに、あたしは特定の義務や責任のある「専門家」であることをそっちのけにしてただの「友だち」でいることはできなかった。
あたしにはこうするしかなかった。
この友人はあたしに選択肢があると思っていて、あたしもそんな気がしてその選択の重さにどんどん追い詰められていったんですが、本当は、あたしが今の仕事を続けて夢を叶えたいと願う限り、あたしには選択肢はなかったんです。
でも、あたしに選択肢があると信じる友人の目には、あたしが友人の信頼を裏切って、自分を守るためだけにその友人を売った、としか見えなかったと思います。
だけど、あたしには、自分はもちろん、この友も、この件にかかわる他の人たちも、そしてこの専門業界も守らなきゃならない義務と責任があったんです。
そんなことを考えて考えて、考え抜いて出した結論でした。
それでも、結論を出してからも何度も何度も迷いました。
本当にこれでいいのか、あたしさえ黙っていれば・・・


まだつづく
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posted by EL at 22:05 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日々の泣き笑い | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ELさん、新しい記事を見てほっとしましたが、しばらく悩み抜かれたようで大変でしたね。倫理の問題は、綱領があるから白黒はっきりするかといえば全くそうではないですよね。誰の利害が絡んでいるのか、専門家としての責任は何か、という問いにどのようにアプローチするかで、その人のプロフェッショナルとしての真の姿が見えてくると思います。ELさんは、お友達に対するコンパッションと、専門家としての責任とのどちらも損なうことなく結論にたどり着いたのではないでしょうか?

これだけの問題を考え抜いたELさんには、素敵なホリデーシーズンが来るに違いありません。島国の州からcheer upできることがあったら教えてくださいね。
Posted by じろう at 2006年12月05日 18:19
よくわかっているわけでもないわたくしが言うのも何ですが、
「あたしさえ黙っていれば・・・」
だれかが通報していただけのことです。

本当に秘密を守りたい人は、誰に対してであろうと秘密を口にはしません。対象が誰であれ、誰かに話すと言う行為は、自分の中でその秘密を守るという堰を切る行為でしかないからです。やがて、その人は別の人にも秘密を語ります。そして、いつか、はわかりませんが、何が、起こるかはわかります。秘密が秘密ではなくなるわけです……ELさん以外にも話していたということはそう言うことだっただけでしょう。

つづきを待っています。
Posted by 中山大安 at 2006年12月05日 23:46
同じ結論でしたね。良かったです。自分に不利になっている今、その友人は「正しい」ものが見えていないんだと思います。でも、「友人」の悪いことによって被害を受けるかもしれない人たちを救ったという風に考えるべきです。もうその友人とは友人ではいられないかもしれませんが、死ぬ前にその友人はELさんに感謝すると思います。

がんばってください。私の好きな言は「聖人の交わり水のように淡く、凡人の交わり酒のように甘し」です。今回の事件にぴったりだと思いませんか?ELさんの決断こそがPh.D.ホルダーの責任であり、意味なのだと思います。
Posted by トラ猫 at 2006年12月06日 09:16
>じろうさん
そーなんですよね、倫理要綱とか法律とか、そこに正解が書いてあるのかと思えば、そうでないことのほうが多いし(-_-)
残念ながら淋しいホリデーシーズンになりそうです。でも、島国と聞いた途端になんかウキウキしてきました♪

>大安さん
そうそう、秘密とか嘘とか、持ったりついたりするんだったら一人で墓場まで持っていけ!と思います。

>トラ猫さん
同じ結論でよかったです(>_<)
すみません、そのコトワザ知りませんでした(;^_^A ググッてみたんですが、ふ〜む、細く長くより太く短くの方が好きな場合はどうすれば・・・(←すごい凡人)
Posted by EL at 2006年12月06日 14:52
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