2006年09月02日

二年目の新学期

7月帰ってきてーっ!とこの前叫んでいたと思ったら、いつの間にか8月も去ってしまって、気がつけば9月犬
海辺の州の勤務先の大学でも新学期が始まりました。

今学期は去年と同じコースを教えるので楽勝楽勝手(チョキ)、と余裕をかましていたら、シラバスが出来上がったのが前日、補足のリーディング集のコピーが刷り上ってきたのが当日、やっぱりドタバタのスタートとなりましたあせあせ(飛び散る汗)

あたしの担当するこのコースは必修科目で修士課程と博士課程の新入生の大半が履修します。
去年はこのコースを教えることしか考えてなかったんですが、新入生のクラスを担当するということは色んな意味で責任重大だと言うことがわかったので、今年はそういうことにも気を配っています。
大学院に入って最初のクラスがあんまり簡単だったり甘かったりしたら大学院なんてこんなもんかと思うだろうし、コース以外のことでシラバスは保存しておくようにとか、学会に入会した方がいいとか、院生としての初歩的な注意事項のようなこともあたしがクラスで言うようにしなきゃ、と思っています。

さて、新学期の最初の授業というと、シラバスを配って終わり、というクラスがよくありますが、あたしは諸々の事情で時間いっぱいキッチリやります。
しかも、このコース、泣く子も黙る耐久4時間以上レース手(グー)

そういえば、去年シラバスを作るときにAオプション・Bオプションのオプション制度(「博士課程コースワーク」参照)が使えないかなと思ってたんですが、使わなくてよかったです。
オプション制度はグレードをつける側にはすごいラクなシステムで、学生から不満も出にくいんですが、それは学生のレベルが比較的均一な場合に使えるシステムで、うちの大学院のように学生のレベルがピンからキリまでの場合は、Aオプションを選んだ学生がかなり出来の悪いペーパーを出してきたりする可能性があって、そうなるととんでもなくややこしいことになるので、絶対使わない方がよい、との結論に達しましたダッシュ(走り出すさま)

と、ここまで書いて去年の初授業のエントリー(初授業その1〜その4)を読み返してみると、今年の第一回目の授業もだいたい同じような感じでしたが、去年よりはちょこっと上手にできて、笑いも去年よりは多く取れました。
いや、アメリカの大学教員というのはエンターテイメント業だなあとつくづく思います。お笑いの大阪で生まれ育って、お笑いの精神が染み付いていてよかったと・・・いい気分(温泉)

ところで、授業の第一回目と言えば自己紹介。
これ、先生によっては"Hi, I'm Dr. XXX."というだけで済ませる人もいれば、名前すら言わないでいきなり授業を始めちゃう人もいます。
あたしはこのコースではコースの設定や内容やポリシーとの兼ね合いでかなり時間を取って自己紹介をするんですが、今年は自分の名前を言うところで考え込んでしまいました。
去年は自分の姓名を言って、YYY(自分のファーストネーム=名前)って呼んでね、ってそれでよかったんですが、今年は自分の名前の頭にDr.ぴかぴか(新しい)という称号が正式にはついちゃってるんです。
でも、実はDr. ZZZって呼ばれるのあんまり好きじゃないんです。
他人からDr. ZZZって呼ばれるのはまだしも、自分で自分のことをI'm Dr. ZZZ.なんで言うのが信じられないんです。
日本で自己紹介するときに「はじめまして、ZZZ博士です。」なんて絶対言わないですよねえ。
こっちは電話を取る時も"Hello, this is Dr. XXX."なんて出る先生たち多いし。

そもそも、豪雪地帯の修士課程のプログラムでも、砂漠の博士課程のプログラムでも、みんな先生たちとはファーストネームで呼び合ってたんです。
あなたたちはもうすぐ自分たちの同僚になるんだから、と先生たちはそれでいいって。Dr.をつけて呼ばれたいって先生はいなかったんです。おかげであたしとしては先生たちのラストネームを四苦八苦して発音する必要がなくて助かりましたがあせあせ(飛び散る汗) ちなみにどっちの大学も比較的トラディショナルな大きな大学です。

ところが今の勤務先の大学院は、ノン・トラディショナルな小さな大学院にもかかわらず、学生は先生のことをDr.付きで呼ぶし、教員の中には学生が博士号の学位を取った瞬間に「じゃあ、これから私のことをファーストネームで呼んでいいわよ。」なんて言う先生もいるし。
「せっかくDr.の称号取ったんだから!」って言われるんですが、あたしとしては別にそれを宣伝して回る必要はないんじゃないかと思うんです。
それでなくても、教員、学生ということで、ヒエラルキー(=権力階層?)の違いは明らかなわけで、学生にDr.と呼ばせてそれ以上にヒエラルキーをつきつける必要はないんじゃないかと?

いや、つまり、あたし、ヒエラルキーが嫌いなんです猫
これはヒエラルキーが極端にはっきりしていて、それに敏感に行動することを強いられてきた日本社会での経験からの反発です・・・眼鏡
アメリカ社会でも、ヒエラルキーはあります。
あたしの好き嫌いにかかわらずヒエラルキーは存在して、それはしょーがないので必要以上にそれを強調したくないんです。
自分の名前にDr.をつけて自己紹介なんてしたら、あなたたちはあたしより下ですよっ!って無理やり相手を押さえつけてるような気がして。

でも、アメリカではそういう風にしないとレスペクトしてもらえないのかな、と思うこともたまにありますが。特にアジア人のあたしは実年齢より相当若く見られて、よく学生と間違えられるしダッシュ(走り出すさま)

そんなわけで、去年と同じくYYY(ファーストネーム)で呼んでね、って言ったら、クラスの中にぶんぶんとクビをおもいっきり横に振って、そんな呼び方できません!という反応をしている学生がいたので、いや別に無理にそう呼びなさいって言ってるわけじゃなくて、Dr.ZZZって呼びたいんならそう呼んでくれてもいいけど、ということにしておきました。

人気ブログランキングへ
この記事へのコメント
Dr.タイトルの有無をそんな気にするのは、外部評価を気にする大学自身ぐらいじゃないですか。

日本ではトップダウン施策(密室)が流行っていて、大事な事は決まってから発表されるうえ、毎年よく分からない基準の評価ばかり受けます(しかもHPで公開される)。
先日は唐突に「俸給表の減額改定」が通知されました。聞いてないよそんなの!運営費交付金ばかりじゃなく、給料まで毎年一律減額する気かよ、まったく。
Posted by ベルガモット at 2006年09月16日 08:51
はじめまして。以前から読ませていただいていましたが、初コメントです。遠い将来には教職につきたいという思いもあって(今はまだコミカレ在学中)興味深く読ませていただきました。是非是非リンクさせてくださいね〜。そしてこれからもよろしくお願いいたします。
Posted by CRNA at 2006年11月04日 01:25
はじめまして。こんにちは。
Riekoといいます。アメリカの大学を卒業し、4月から日本の大学院へ通う予定の者です。
今日ELさんのブログを見つけて、2時間位続けて読ませていただいてます★ためになることばかり書いてあるし(私も博士号取得を希望しているんです)楽しい内容でいっぱい元気もらいました★
憧れちゃいます〜。本当に。
Dr.ELさん(呼びたいぃ)これからも拝見させて頂きます〜。
Posted by Rieko at 2006年11月15日 02:26
>ベルガモットさん
んー、アメリカには「先生」という敬称がないので、Dr.はその代わりみたいなもんだと思うんです。どこかに電話して"This is Dr. ZZZ."って名乗ると相手の対応が全然違ったりするし・・・
トップダウンが流行ってるんですか!?うちの大学はShared Governanceをウリにしているのにもかかわらず、トップダウンな傾向があるので、トップダウンを表に出している施策だととんでもなさそうですねぇ。

>CARAさん
いらっしゃいませ(“時差コメント返し”でごめんなさい・汗)。
夢に向かって頑張ってください。

>Reikoさん
はじめまして。あ、憧れ、ですか・・・(^_^;)
2時間も続けて読むと身体によくなさそうですが(笑)
日本の大学院は私には未知の世界ですが、是非博士号取ってください!
Posted by EL at 2006年12月04日 05:12
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
 
Web phd.seesaa.net