このシリーズも前回から随分間が空いてしまいましたが、とりあえず思い出しながら書いてみます。
前回は採用の委員会メンバー(教員5名)が個別に応募書類を読んで評価表に記入するという作業をしました。
評価表は大まかにTeachingとScholarly Work(Publication、Grant Potential、など)と専門職能力の三つの点で評価するように構成されていました。
そして委員会のメンバー全員が集まっての会議。
最初はこの応募者はどう?と応募者一人一人について意見を言い合ってたんですが、それだと時間がかかりすぎるので、自分のトップ3をメンバーがそれぞれ出すことになりました。
その結果ほぼ全員一致で三名の候補者が決まりました。
候補者AさんとBさんに関しては書類上からTeachingと専門能力はそこそこだろうと推定。二人とも複数の出版論文と投稿準備中の論文がいくつかありました。
それに加えてAさんは専門協会の学生メンバー代表を務めたりしてうちの教員の中にAさんのその協会での働きっぷりを知っている人がいて、リーダーシップとGo Getterなところ(アメリカならでは?)が特に評価されました。
Bさんは主著の出版論文がいくつかあって、今後の研究計画もきっちりしているし、グラント書きの経験もあるということで、スカラーシップの可能性が特に評価されました。
このBさん、実は砂漠の大学院の同じプログラムの友人で(「今度はこっち(採用)側」参照)、あたしとしては当然先入観はあったんですが、できるだけ他の応募者と同じように応募書類だけを評価しても、やっぱりいい!と思ったのであたしのイチオシでした。でも、これが後にあたしの中でかなりの葛藤を呼び起こすことになったんですが、その話は後ほど。
問題は候補者Cさん。
このCさん、先学期から非常勤としてウチのプログラムで教えていて、学生の評価もよく、うちのプログラムのディレクターがかなり気に入っている人なんです。その気に入っている理由というのが、マイノリティーで二ヶ国語しゃべれるから。(まる)(-_-)
いくらなんでもそれだけじゃマズイと思ったらしく、この会議の前にディレクターはCさんと個人的に会って色々と話をして、自分がこの人と仕事できそうかどうかとか、研究のことなんかもいろいろ聞いた模様。
もう一人の先生もこのCさんのことをよく知っていて、他の候補者の応募書類はザッと見ただけで、もうこの人がいいとすでに決めている感じでした。
しかし、このCさん、出版論文一つも無いんです。唯一あるのが博士論文を現在投稿準備中、と。書類上には今後の研究計画もないし、そもそも応募書類では研究に関することにほとんど触れられてないんです。カバーレターもなくて、いきなりTeaching Philosophyだけ。その教育哲学も回りくどくて言ってることがよくわからなかったし。
あたしの中ではCさんのランキングはかなり下でした。
でも、うちのディレクターが言うには「確かに“書類上”ではあまりよく見えないけど、話をしてみたら研究計画もちゃんとあるし、(応募に関する常識的なことを知らなかったりするのは)博士課程であまり指導してもらわなかったんじゃないかな」とのこと。
話をしてみたら、ってこのCさんはたまたまうちでもう教えてるしいつでも話ができるからいいけど、それって他の応募者に不公平でないかい?とか、
博士課程でちゃんと指導してもらわなかったってことは、そもそもCさんが大学教員になるのに興味がなくて指導を乞わなかったのか、はたまたCさんに何か問題があって博士課程の先生たちがあまり手をかけたいと思わなかったか、博士課程にそういうことを教えてくれる先輩や友だちがいなかったか、って可能性ないですか?とか、
あたしは思ったわけですが、Cさん支持のディレクターや他の先生たちの耳には入らない様子。
でも、Cさんのマイノリティー・ステータスと某言語が喋れるってことはうちのプログラムにプラスになる、という点は確かにそうだと思ったので、まあとりあえず面接してみて、ということで納得しました。
あたしがCさんで、選ばれたのがそんな理由だってわかったらガッカリだろうなぁ・・・
そんなわけで面接に招待する候補者が三人決まったわけですが、あたしはうちのプログラムの採用プロセスにこの時点でかなりガッカリしました。
他の大学は業績を中心にもっと公正で厳密な審査をするみたいですが、うちはディレクターが何よりも採用者の人間性を重視する人なので、この人はみんなと仲良くやれそう?なんてことが業績より先に話題に上ったりするんです。
そうなると当然Committeeの中に知り合いがいると有利になるという構造が・・・
会議の後、この三人の候補者の推薦者たちに電話をして何か問題はないかみんなで分担して問い合わせることになりました。
なんでも、以前近所の大学で新規採用をした人が大問題を起こして、後になってその人の推薦者が「推薦状には書けなかったけど電話してくれれば言ってあげたのに」ということがあったみたいで、念のためということらしいです。
あたしの友人のBさんに関しては、砂漠のプログラムで有名なこの先生から推薦状がないのはおかしい、ということでその先生をよく知っているディレクターがその先生にも問い合わせることになりました。
しかし、ディレクターの中ではもうCさんってほとんど決めてるみたいなのに、面接なんてする意味あるのかしら?
次回は面接の模様をお届けします。
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私がCさんでもがっかり来ますが、AさんでもBさんでもきっと腹が立つでしょうね。でも、所詮はコネの世界。そんな風に就職が決まるのかもしれませんね・・・。
当て馬ってそりゃまたヒドイ・・・
>けいこママさん
わざわざ携帯でご覧いただいて恐縮です。何の博士かは実はまだ公表してないんです。特殊な分野なので公表すると個人が特定できてしまう可能性が大で、そうなるとこのブログが続けられなくなりそうなので、今のところ皆さんのご想像にお任せしてます。